任意売却と競売の違い
競売について
競売とは、返済が滞ってしまった債権の回収のために、債権者が裁判所に申し立てを行い、債務者の不動産を裁判所が売却することです。
こちらは所有者の意思とは関係なく強制的に売却が行われてしまいます。
競売開始決定通知書が届くと、4ヵ月~6ヵ月程度で入札が行われます。
ただし、競売の手続きが開始された後でも、期間内に任意売却によって売却が出来れば競売の取り下げが可能になります。
競売のデメリット
・相場より安い価格で売却されるため
・残債務が多く残ってしまう
・引っ越し費用などの資金は一切受け取れない
・インターネットや新聞、官報に情報が掲載される
・税金等の滞納がそのまま残る
・落札者の都合での立ち退きを要求される
・競売にかかる費用は自分で負担しなければならない
任意売却のメリット
・競売よりも高い価格での売却ができる
・引越費用を捻出できる
・残ったローンについても金融機関と返済計画を立てられる
・プライバシーを守れる
・諸費用を売買代金から捻出できる
・引越時期などの融通も聞いてもらえる
・リースバックを利用すれば、住み続けることも可能
競売物件の価格が下がってしまう理由
競売物件は一般の流通物件と比べ50%~70%程度の価格で落札されることがほとんどです。
その理由としては購入者のリスクが考慮されているためです。
代表的なものに以下があげられます。
・入札者は物件の内覧ができない。
こちらは裁判所の資料や数枚の写真でのみ判断することとなります。
・通常の売却のように重要事項説明もないので、裁判所の調査でわからなかった隠れた瑕疵がある可能性がある。
・占有者がいる場合、購入者の負担で立ち退きを行わなければならない。
裁判所も上記の理由も考慮し、入札金額の最低ライン(売却可能価格)を一般市場価格の50%から60%程度で設定をします。
競売の流れ
①住宅ローンの滞納から期限の利益の喪失まで
住宅ローンの滞納が3ヵ月~6ヵ月続くと、期限の利益を喪失します。※期限の利益とは分割での返済が出来るということです。
ですので、この時点で住宅ローンを一括で返済するように請求されてしまいます。
②代位弁済
一括返済を請求されても、ほとんどの方は一括返済はできません。そこで債権者は保証会社より代位弁済を受けます。※代位弁済とは、保証会社(サービサー)が債務者に代わり全額を返済することです。
代位弁済が行われると、次は保証会社(サービサー)より一括返済を請求されます。
ここでも支払いができないと、次は「法的手続きに移ります」等の手紙を郵送してきます。
※法的手続きとは競売の申し立てを行うことです。
この時点で保証会社より任意売却を勧められるケースもあります。
③競売開始決定の通知
保証会社が競売の申し立てを行うと、裁判所より「競売開始決定の通知」が届きます。
こちらには事件番号や債権内容、物件情報などが記載されています。
その後、「現地調査のための連絡書」が郵送されます。
こちらは競売のための現地調査に執行官と不動産鑑定士が自宅に訪ねる旨が記載されています。
④現地調査
「現地調査のための連絡書」が届いたのち、実際に自宅の現地調査が行われまます。
こちらは裁判所の執行官と不動産鑑定士が自宅を訪ね、物件の確認を行います。
調査内容
・家の前の道路の幅員、接道状況
・隣地との境界
・未登記の建物がないか※増築など
・室内の状況の確認、また写真撮影
・現在の居住者について
・故障している設備はないか
・修繕履歴等
⑤評価書が作成
現地調査から約1ヵ月~2か月後に、裁判所に「評価書」が備えられます。
こちらは調査の結果の落札金額の目安が記載されたもので、ご自宅の状況や室内写真などが記載されています。
※現段階では、評価書の閲覧は本人や利害関係者のみとなります。
⑥期間入札の通知
「期間入札の通知」とは、入札日・開札期日・売却基準価格などの競売の内容を具体的に記したものです。
こちらの通知が届くと、ほどなく期間入札の公告も行われ裁判所のホームページや各種媒体によって競売情報が公開されます。
⑦入札開始
期間入札後2ヵ月~3か月後、公告後の訳2~4週間後に不動産競売の入札開始となります。
一週間の入札期間を設けて入札が行われます。
入札開始日以降は、債権者(借入先の金融機関や保証会社)が任意売却を認めなくなります。
その後に開札が行われ落札者が決まります。その後、裁判所による落札者の審査が行われます。
⑧売却許可決定
裁判所による落札者の審査の結果、購入が認められると、購入者は裁判所に代金の支払いを行います。債権者(借入先の金融機関や保証会社)は、その代金から住宅ローンの債務を回収します。
⑨引渡命令
代金の支払いが終わると、いよいよ立ち退きをしなければなりません。購入者によっては、ある程度お話し合いができる場合もあるようですが、期待はできません。
また、以前は“居座り”が横行していましたが、現在は不可能です。
警察官の立ち合いの元、立ち退きが強制執行されます。
競売になると、不動産会社が多数訪れることも・・・
競売の開始が決定すると、管轄の裁判所で物件情報が開示されます。これらの情報から物件と所有者を容易に特定することができます。
その情報を見た不動産会社が「うちで任意売却をさせてください」と訪ねて来ることがあります。
中には、信頼できる任意売却業者の担当者もいますが、注意も必要です。信頼できる不動産会社かどうかを見極めるのは簡単ではありませんが、「ホームページがあるかどうか」、「会社の規模はどれくらいか」、「実績はあるか」などを判断材料にしましょう。